友人が年末に石川県に行った。
なぜ石川県なのか、とか何をしに行くのか、とかいろいろ疑問はあったものの、まぁいい大人が決めたことだし特に深くは聞かなかった。
この友人は去年の11月頃まで立ち飲みバーで店長をやっていたやつだ。(ちなみに以下の記事にも出てもらっている。)
なぜ仕事がなくなったかと言うと、コロナ禍でお客が少なくなったからとかもあると思うけど、主な理由としてはオーナーをブチ切れさせたかららしい。その原因は彼の怠慢などによるところが大きいようだ。
そんな奴なんだが、年末に石川県に仕事をしに行くと言い出したのでその時点では意味がよく分からなかったし、自身の怠慢で仕事を失った男が石川県に行って仕事を続けられるのかなと純粋に思った。とは言え、バーの店長をやる前は普通にサラリーマンをやっていた男ではあるのでたぶん大丈夫だろう、好きにすればええやんくらいに僕は思っていて、帰ってきたら話を聞いてみるか程度で考えていた。
仕事は約1ヶ月ほどの短期ワーホリ的な感じらしく、飲食店の手伝い等をするとのことだった。
2月上旬にその男が愛知に戻ってきたので、先日一緒に飲みに行ったついでにインタビューをしてきた。
ある男の凱旋インタビュー
お疲れさん、いろいろ聞かせてよ
いいよ
①石川県の最初の印象と一人の時間ではなにをしたか
年末って愛知ですら雪とか寒さヤバかったけど実際あっちはどうだった?
金沢までは電車で行けるから良かったんだけど…、そこから能登半島方面へはバスで行ったんだよ。近付くほどに「やばいとこ行ってるな〜」と思っちゃったね。実際雪も1mくらいは積もってたし、雪以外にまわりに何もなくて名古屋に慣れた自分にとってはホントにやばい場所だった。
雪やべ~ね。じゃあ暇なときって一人でなにしてたの?
ネットフリックス、YouTube、散歩とかかな。そこは名古屋にいたときとあんまり変わらないかも。あと強いて言えば昼は近くの観光をしてたかな。まぁ一人で行ってるから、観光地でも「ほ~ん」くらいしかなかったけど…。
やはり日本海側だけあって年末の石川県は寒さと雪が猛威を振るっていたようで、第一印象はそこに注意がいっていたようだ。でも確かに愛知もたまに雪は積もるけど、1mというのは体験したことがない。実際に目の当たりにしたら、こりゃ取返しつかないぞ…😇となっても不思議ではないかも。
とは言え、次第にそれにも慣れてそんな感覚も最初だけだったようだ。
②行って気付いたいろいろなこと
やっぱり冬の日本海側は噂以上だな。まぁでもそんな非日常にいきなり飛び込んだらいろいろ気付けたこととかもあったんじゃない?
そうだね、まずは自分の寒さ耐性に気付いた。名古屋だと基本、暖房の部屋にいたから気付かなかったけど、けっこう寒さは我慢できるみたい。
なかなか面白い気付きだなと思えた。自分が寒さに強いかって考えたこともなかったけど、能登の寒さがそれを彼に気付かせてくれたのだろうか。
他には?
そうだな~、行ったとき働き先の人たちが飲み会をやってくれたんだけど、その時に「自分は緊張すると勝手に喋りまくってしまう」という気質があることに気付かされたね。そういうのも名古屋だと気付けてなかったから全部新鮮だった。
「気付いてなかったのか…」と友人の僕としては思ったものの、そんな客観的なことにまで気付いてしまうとはなかなか良いワーホリになっている。これが本来のワーホリのあるべき姿のような気がした。新天地に行くと意図せずして自分探しができてしまうということだろうか。自分探しは何もインドに行かなければできない、ということではないのだ。
あ、あとさっきも言ったけど、サブスクはありがたかったね。暇な時間もこれさえあればなんとでもなるのよ。もはや極端な娯楽とかは必要性低いのかもね。
逆に言うと、都会には不必要なものが多い。行った場所に何もないからこそそれに気付けたと思う。
なんか最後に少し良いことを言われました。「都会には不必要なものが多い」…なんかそぎ落とされてて良いセリフだなと素直に思いました。確かに名古屋といえども都会は都会。無駄な消費や欲というものは気付かない内に誰もが享受してしまっているのかもしれない。これにはワーホリ的体験をしたことがない自分もハッとさせられた。
③仕事してみてどうだった?感じたことや今後に活かせること
そういえばそもそもどんな仕事したの?
和食のレストランで配膳とかをやってた。夜は1時までやって朝は6時から。ただ、昼は休憩だったからそこは寝てたかな。最初は初めてのことばかりで長く感じたけど慣れてルーティンになると結構早く感じたね。ちなみにそこで働いてる正社員の人が「お客様は絶対」と本当に言っていて若干引いたな。
なかなかにハードな勤務時間と厳しめな勤務態度が求められる職場だな…と感じるけど人間の慣れってものは驚異的ですね。自らの怠慢によって仕事を失った男でも順応さえしてしまえば一見大変そうな仕事でもこなしてしまうという事実は、人間の可能性を感じずにはいられない。やればできるもんだ。
なるほど、ほかに仕事してみて感じたこととかは?
自分は長男で、良い大学を出て、普通に就職して…とそこら辺までは一般的なレールに沿って生きてきてた。でも、バーの店長やったり今回のこととかを振り返ると、別のレールに乗り換えたというより、言い方は悪いけどレールを脱線した人生になってきたなと思う。でも、都会で神経すり減らしながら仕事して生きてきた人が地方に来てこう言う仕事をやってみると、意外と普通にここでも生きていけるなと思えて気楽になるんじゃないかなと思えたね。実際自分はそう感じた。1週間でもいいから、そういう人はやってみる価値はあると思う。
彼はなにかを悟ったのかもしれない。もともと彼はどっちかと言うと、俗に言う一般的な成功(仕事でお金をたくさん稼ぐこと)に囚われていた節があったと思うけど、石川県でそんな邪念が振り払われたのかも、坊主でもあるし。
今後に活かせることとかはなんか得られた?
まぁまずは和食の知識が増えたことかな。あとは移住者の気持ちがわかるようになったってのも結構大きいかも。自分的にはさっきと同じで移住自体ももっと気楽にやっていいと思うけど、世間一般ではけっこう重大なことのように思えるよね。自分も初めて移住に近いことを体験してみたけど「移住」っていう言葉はなんか重く感じるから、もっと軽めの言葉にした方がいいと思う。
ちなみに別の話だけど、手続きとかで市の職員と喋ってたときにその人が、テレビの田舎万歳な番組に文句言ってたよ。なんかそういうの見て「田舎でログハウスで暮らしたい!」って人が多いんだって。ログハウスがひとつのゴールになってしまっていて長続きしないらしい。
「移住という言葉が重い」というのは体験者ならではの気付きだと感心した。確かに移住って人生を賭けてするものだと思い込んでたけど、そう聞くと実はそうではないのかもしれない。まぁかと言って気軽にログハウスを建てりゃいいってもんでもなさそうだけど。
まとめ
と言うことでけっこういろいろ聞けたし、彼もどうやらいろいろ経験を積めていたということがわかった。
基本的には「へ~」って感じだったけど、中には核心を突くような気付きや悟りを得ていて聞いているこっちも思わず「おぉ…」と思えることが聞けた。
1ヶ月という短期であっても十分に自分を見つめなおせるし、国内(しかも地元とそう離れていない)であっても自分探しはできることの証明になっているんじゃないだろうか。何をやるにしても、なにかを得られるかどうかは結局自分次第なんやね…。
ちなみに今後はどうするか聞いたところ、石川県で芸術祭が開催されるらしくそこに隣接するレストランで働くとのことで3月中旬以降でまた石川県に戻るそうだ(この仕事は人との縁でとんとん拍子で決まったらしい。そこら辺はもともと変に運の良さがあり、この件についてはスムーズすぎて周りの人も驚いていたようだ)。
どうなるかは分からないものの、もし自分も都合が合えばその芸術祭に行きがてらそいつのレストランにも行ってみようかな。
芸術祭に行く予定がある方はついでにこの男も探してみてはいかがでしょうか。
おわり